ランタンルージュ lanterne rouge

のる、のむ、よむ

映画『渇き。』 癖になりそうな「衝撃」

封切映画を初日(のしかも一番最初)に観るなんて、何年ぶりだろう。それくらい楽しみにしていた映画でした。*1

原作は深町秋生の『果てしなき渇き』。深町秋生はかなりあとになってからの読者で、数年前に(事実上の)デビュー作である本作(文庫)を注文したところ、品切だった苦い思い出があります。今回、映画化に伴い、増刷、やっと購入できて読んだのですが、

これ、映像化は無理だろ!

という物語でした。まあ、R-15指定だし、だいぶ(やわらかく)変えたのかな、と思いきや…。

ストーリーとしては、元刑事の父親(藤島・役所広司)が失踪した娘(加奈子・小松奈菜)を探すうちに彼女の知られざる面が明らかになり、そしてフラッシュバックのように挿入される3年前の事件との関わりも徐々に浮かび上がってくる、いま彼女はどこにいるのか? という典型的なハードボイルドのフォーマット。

だけどね。

主人公・藤島の破滅への舞踏が切れすぎるのですよ。暴力などという生やさしいものではなく、「あのガキ、ぶっ殺してやる」、原初の力がそのまま迸るような力への意志の乱舞というか、「あのガキ、ぶっ殺してやる」、なんというか。見ていらないはずなのに目が離せません。役所広司がすごいのか監督の演出がすごいのか。

また、「あのガキ、ぶっ殺してやる」、失踪した加奈子に関わる人物はことごとく破壊の底へと堕ちていくのですが、とにかく容赦ありません。わが健全なるにょーぼ・子供には決して見せられません…。

映画にも役者にも詳しくありませんが、原作でもキーパーソンのひとりである藤島の元部下・浅井刑事(妻夫木聡)にはしびれました。棒つきキャンディーをつねにペロペロしながら「先輩ー、いまどこなんですかー」と粘着する外道っぷりは、他の登場人物とは一線を画していたように思います。「ハードナッツ*2以来のファンである橋本愛ももちろんよかったのですが。

うーん、纏まりませんね。そしていまだ頭と心の痺れが止まりません。「あのガキ、ぶっ殺してやる」。

始原の暴力と神話的物語を容赦なく描いた、人生の機微のわかる大人のエンターテインメントとして、いかがでしょうか。


★映画『渇き。』公式サイト http://kawaki.gaga.ne.jp

*1:自転車でグランベリーモールへ。20人くらいだったかな。

*2:つい最近ですね。実家のBSの録画を見たのでした。